マッケンジー法
マッケンジー法症例6 ぎっくり腰|30代主婦
5日程前、リモコンを取ろうとした瞬間にぎっくり腰を発症。昨年も1~2回ぎっくり腰を経験されていますが、今回は超絶痛くて動けない状態だったそうです。
這う這うの体で、何とか家事をこなしていましたが、5日たった今も歩くのに一苦労。通常のぎっくり腰であれば、5日経てばほぼ日常生活に支障が無くなることが多いのですが、思ったより治りが遅いようです。
痛みの範囲は、ちょうど骨盤の右側のみ。当初の痛みが10とすると、今は7位になっています。咳やくしゃみをすると腰まで響き、朝起きた時が一番つらく、暫く座っていると時間と共に痛みが引いてくるそうです。
4年前に婦人科系の手術をされていますが大きな事故や病気は無く、レッドフラッグ(危険な兆候)はありません。

可動域は、前屈は非常に柔らかくあまり痛みもありません。逆に、反らす方向は痛みも強く殆ど動かせません。歩くときは上半身を左に傾けてゆっくりと歩いており、この歩行時をベースライン(評価の基準)としてみていきます。
⇒腰部ROM 伸展 重度制限 ベースライン 歩行時痛 VAS7


布団の上でも良し、クッションがある方が楽でしたら座布団を折り重ねてお腹の下に敷くもよし。家の中で使えるものは何でも利用します。

。。。体勢を変えるのは大変でしたが、何とかうつ伏せになれました。
1~2分すれば、この体勢に慣れてきました。




背筋を使って、「反らせる」のではなく、緩めた糸の様に腰を「たわませて」ください!!
また少し経つと、この体勢に慣れてきました。
この時の体勢は、いわゆる「うつ伏せで本を読むとき」の様な姿勢です。
マッケンジー法では、この体勢を「パピーポジション」と呼んでいます。
ご本人は、昔から“反り腰”と言われ続けており、「腰を反らせることは良くない」と思っていたそうです。普段の生活でも、反らせる事はまずなかったとのこと。
確かに、反らせる事で悪化する場合もありますが、今回の問診の中で「屈曲方向で悪化すると思われるサイン」がありましたので、伸展方向を第一選択として進めていきました。
すぐ慣れはしますが、体勢を変える時の痛みの度合いが大きいのと、双方この後に予定があり、初診は30分以内という前提がありましたので、時間が取れる時に無理のない範囲でパピーポジションになってもらう事を宿題として初回を終了しました。
翌日



その翌日

上体起こし(パピーポジション)も余裕です!
その次のステップとして、※EIL(うつ伏せから、腕を伸ばして腰を反らす反復運動)
※過去の症例報告をご参照ください マッケンジー法症例3 長引く腰痛|40代男性教員
を実践してもらおうと考えていましたが、自主的に既にされていました(^_^;)
1日5回×5セットと言いましたが、もっと頻繁にされているので実施回数はご自身にお任せしました。
そのまた3日後
一時的にEILで腰が痛むため、ご自身の判断でパピーに切り替えた時もありましたが、

と説明し、毎日続けて貰った結果。朝はまだ少し痛むようですが、あとは普通に動けるまでに回復されたとの事でした。
今回、「自分は反り腰だから、腰を反らせる行為は駄目なこと」という思い込みが、改善を遅らせていた一因の様に感じました。 もし、反り腰で負担がかかり易い構造であるのが事実だったとしても、今回のぎっくり腰に関しては「反らさない事が正解」ではありませんでした。
病院や整骨院で言われた言葉は強いインパクトを残し、その後の行動を制限することがあります。
改善方向を探る手段として一時的に痛みを再現させることもありますが、マッケンジー法は、病名や思い込みを出来るだけ排除して、目の前の反応を基に評価していく事を旨としています。
前回の症例 ⇒マッケンジー法症例5 両脹脛の痺れ|80代女性