マッケンジー法
マッケンジー法症例5 両脹脛の痺れ|80代女性
今回は80代後半の女性で、主訴は両ふくらはぎのダルさと痺れです。
左大腿骨を40年くらい前に骨折していますが、現在は問題なし。脹脛(ふくらはぎ)のだるさは昔からだそうですが、痺れはこの2~3か月でから顕著になってきた様です。パテックス(湿布)を貼るのが長年の習慣になっており、普段杖を使って歩かれています。
自分でかかと上げ運動30回行ったり、良いと思われることを試していますがあまり効果は感じないとの事。
ご本人としては、だるさよりも痺れが強くなってきたことに不安を感じており、それが原因で歩きにくさを感じているそうです。
普段感じている両ふくらはぎの痺れ3~4/10 を評価の基準としました。
マッケンジー法で下肢に症状がある場合、まず腰椎の評価から行います。
6年ほど前に大腸の手術を経験。ストーマ装具(パウチ)を使用していて、うつ伏せが暫く続くとしんどくなるそうなので、まずは仰向けで腰椎の屈曲方向から進めていきます。
仰向けで寝た状態から、膝を自分で抱えて腰を前屈させる動作(FIL)や、椅子に座った状態で腰を前屈させる動作(FISitting)の反応を確認します。
いずれも顕著な変化はなく、椅子に座って下に屈むFISitは、頭に血が上る感覚があり続けれられせん。
次は、普段避けているうつ伏せにトライしていきます。
腰自体は痛みも痺れもないそうですが、反らせるような動きをしたことが無く、「反らしちゃダメ」という思い込みを取り除く事から始めていきます。
まず、クッションの上にゆっくりとうつ伏せになってもらい、変化がないか確認します。
僅かに腰に押圧を加えると、脹脛のダルさは減りましたが、痺れが足先へ移ったような感覚との事。
・腹臥位腰椎伸展モビ P 腰の痛み/ ↓ 右ふくらはぎのダルさ減弱。つま先に痺れ移動
次に、肘で体を支える「パピーポジション」にゆっくりと移行。
高齢ですが健康で比較的体力もある方でしたので、時間をかけて腰の伸展に慣れてもらった上で、更に強度を上げていきます。
腹這いの状態から、腕で上体を起こして腰をたわませるEIL※1 の動作も比較的スムーズに行えました。
ご本人の感覚もお聞きした上で、パピーポジションを第一選択とし、
1分×3セットを毎日続けて貰う事を目標として初回を終了。
2回目のフォローアップ(約一週間後)
一日2回ほど実施されていたそうですが、拝見するとパピーではなく、かなり力が入った感じでEILをされています(^_^;)
そのままモニターすると、だるさが足先へ広がるとの事。一見、悪い反応の様に見えますが「脹脛の症状が腰椎由来である可能性が高まった」とも考えられます。
いきなりEILで腰を反らせるのではなく、
①うつ伏せでリラックスして力を抜く
②肘で上体を支えた状態(パピーポジション)を1分程続ける
③うつ伏せで力を抜いて休憩を入れつつ、②を3回繰り返す
④EILを行う
という順序で行う様にしてもらいました。
力を入れて腰を「反らす」のではなく、力を抜いて「腰をたわませる」ことが重要になりますが、EILだとどうしても力が入りがちなので、家で行ってもらうエクササイズは、パピーポジション 1日1~2分×3セットとしました。
3回目(更に1週間後)
家で1日3セットほど実施しており、モニターした感じではうまくできています。
ただ一点、エクササイズを行っていると力が入って右膝の内側に痛みを感じたそうですが、足首を曲げずに足の甲を寝かせて貰うと力が抜きやすくなりました。
また、普段10分ほど歩くと痺れてくるが、パピーをすると痺れが軽くなる事が実感できたそうです。
当初感じていた両脹脛の痺れは3~4/10でしたが、 現在1~2/10で経過は良好なので引き続き継続してい貰います。
4~5回目(初回から約1ヵ月後)
1日3セット以上、パピーを実施できているそうです。右膝内側の痛みも出ていません。
次の段階として、パピーを1~2分行った後にEIL(下記動画参照)を行ってもらうようにしました。
その後、ふくらはぎの痺れはほぼ感じない状態を保てるようになり、現在はたまにエクササイズの確認を行う程度で済んでいます。
しかし、「人間、のど元過ぎれば何とやら」で、調子が良くなるとすっかり日々の継続を忘れてしまいます。
自分自身も全くその通りなので、あまり人に強く言えません(^_^;)
もし忘れてしまっても、「不調のきざし」みたいなものを感じたその時に、この経験を思い出してエクササイズを実践もらえれば意味があると思ってます!!