マッケンジー法
マッケンジー法症例1 腕を降ろす時の肩の痛み|80代後半女性
これまでの経験も含めて、マッケンジー法がどういった症例に適用できるのかを紹介していきたいと思います。
過去の内容と重複する箇所もございますが、参考になれば幸いです!
痛い箇所が原因とは限らない!!
今回は90歳に近い高齢の女性。比較的お元気で、日常生活も特に問題はありませんが、腕を上げて降ろしてくる途中で決まって痛みがあるそうです。
左腕を拳上して、ゆっくりと降ろしてくる時に90°付近で左肩の三角筋付近に強い痛みが生じます。過去に事故で左肘を手術されていますが、今はその箇所に痛みはなく動きの制限もありません。
※マッケンジー法における肩へのアプローチの仕方
マッケンジー法では、まず脊柱由来の可能性を考えます。
これは肩に限らず、股関節や肘、手首や足首の末端の関節においても同じです。
勿論、痛むその場所自体が原因のこともありますので、問診で詳細を伺いながら総合的に判断していきますが、肩はもちろん、肘や手先の症状も、首(脊柱)の影響を受けている事がよくあります。
例えば、転倒等でどこかを痛めて、その後痛めた箇所自体は完治しているのにずっと違和感が残っている場合や、肩が痛くて、今まで肩に対して色々な治療を行ってきても効果が得られない方は、脊柱(頸椎)からくる症状を疑ってみると解決に繋がるかもしれません。
さて、話を戻します!!
今回、改善・悪化の基準となる動作を、痛みを再現できる「左肩の上げ下ろし」としました。 万歳に近い状態から、ゆっくりと腕を降ろしてくる動作です。
変化を分かり易くするために、痛みや違和感を数値化します。
全く痛くなければ0。最大級の痛みを10として、数字でA子さんに表現してもらった所、今回の肩を降ろす時の痛みは「5」位とのこと。
ベースライン 左肩上げ下ろし VAS(Visual Analogue Scale) 5/10
まず、普段やりがちな姿勢(猫背で顎を少し突き出してしまう様な姿勢とは逆の姿勢。つまり、顎を水平に引っ込める動作をしてもらいます。
元々首の動きが悪い人は可動域が少なく、単に下を向く動作になってしまう事があるので、時間をかけてコツを掴んでもらいます。
今回ご高齢ということもあり、顎を引くという動作が理解しにくそうであったため、座っている状態での姿勢矯正に絞りました。
バンザイした手を、ゆっくりと降ろしてきてもらいます。
90°付近での反応は…
降ろす時に感じていた肩の痛みが消失しました。
姿勢を崩して、顎を突き出した様な姿勢で同じ動作を行うと、痛みが再現されます。
どうやら、姿勢(脊柱)が影響している様です。
暫くしてから再度、確認のために姿勢を正した状態と崩した状態で腕の上げ下ろしをして貰いましたが、矯正した姿勢だと肩の痛みは起こりませんでした。
肩が原因ではなく、神経の通り道である首(頸椎)に問題があったようです。
こういうケースは沢山あり、頸椎の5~7番、上部胸椎の間から上肢へと繋がる神経が出ているのでその影響が考えられます。
肩が痛くなったら「もうそろそろ歳だから…」と五十肩と自分で思い込み、実は肩は関係がないという事が多いです(※もちろん肩が原因の場合もあります)。
問題なのは、姿勢(首)が原因であるのに肩をマッサージし続けていたり、お医者さんから「とにかく動かすのは良いことだ」と勧められて、姿勢が悪いままで肩の運動で悪化している可能性がある。という事です。
慢性的な肩の痛みがある方は、少し切り口を変えてみる事が改善のきっかけになるかもしれません。
過去の関連リンク → 姿勢が悪いと本当に身体の調子が悪くなるのか??
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