所感
福井モデル|未来は地方から始まる|藤吉雅春 著
ども! パソコンの調子が悪くなって修理に出してたのが無事戻ってきました。
最近Windows updateをした際の、security essential更新が悪さしたようです。
改めてバックアップや設定などを見直すきっかけになりました。
さて、今回は読んで大変面白かった本を紹介します。
福井モデル 藤吉雅春 著
全国ランキング上位の北陸3県
住みやすさや幸福度の都道府県別ランキングで「福井・富山・石川の北陸三県は常に上位」というのを昔から聞いていましたが、武田鉄也さんの本で紹介されていた“福井モデル”の内容が興味深かったので手に取りました。
目次
・凄いぞ!!世界先進5都市に選ばれている富山市
・富山市の「孫とお出かけ支援事業」の効果!!
・北陸3県(特に福井)の全国ランキングから見た実力
・まとめ
・すすまないコンパクトシティの実情|2018年4月21日 日経新聞一面より追記|
凄いぞ!!世界先進5都市に選ばれている富山市
2012年OECD(経済協力開発機構)発表。
世界先進5都市
・パリ
・ポートランド
・メルボルン
・バンクーバー
・富山市
パリとメルボルンは200万人以上の大都会ですが、富山市、バンクーバー、ポートランドは40~60万人。(自分が住んでる和歌山市も36万人くらいですから、規模としては大差なし)。この中で、65歳以上人口が21%を超えている超高齢社会は富山市のみ!
一地方都市やのに、すげぇな富山市!!
ぼくも富山は好きで5回くらい行ってますが、この事実を知りませんでした。
何なら、富山に住んでる友達も知りませんでした(笑)
何を以て先進としているか?の定義ですが、簡単に言うと「地球温暖化対策」と「持続可能な経済成長」を重視。高度経済成長期は、人・車・税収が右肩上がりだったので道路や街をどんどん拡散していきましたが、今は集約させて住みよいコンパクトな街というのが狙いになっています。
先進国の多くがこれから直面する少子高齢社会に向けて、現時点で興味深いモデル都市となるのが富山市なわけで、世界中から視察に訪れるそうです。
マレーシアのジョホールバル州なんかは富山市と提携しており、富山を模倣した街を州の中に建設しているそうです。
公共交通で暮らせるコンパクトな街に
富山市の2005年には約28%だった市街地に住む人口は、コンパクトシティ化の結果、2013年に約32%に増加。20年後に42%という目標に向け、駅から500メートル以内の住居建築には市が補助を出すなど、郊外へと拡散を続けてきた従来の流れを変えつつある。道路延長に関わる上下水道整備費用や郊外化が進むことによる行政コストも抑制できるコンパクトシティ化が、少子高齢化が進んだ30年後の富山市民のためでもある。
病院や買物できる施設を徒歩20~30分圏内に集約させており、それを繋ぐのが、富山ライトレール(路面電車)と、ライトレールの駅に接続する路線バスです。
車両の低床化、ホームのバリアフリー化、低騒音化などを実現しており、公共交通の割引制度、祖父母が孫と外出すると公共施設が無料で利用できる『孫とおでかけ支援事業』などを通して、多くの高齢者が外出し、市街地商店街も活性化しているそうな。
「孫とお出かけ支援事業」の効果!!
祖父母の方がお孫さん(ひ孫もOK)と施設に来館されると、入園料・観覧料が無料になる取り組みを近隣11市町村で行っています。
表向きは、高齢者の外出の機会を促進するとともに世代間交流を通じて家族の絆を深めるために。また、地域の文化や歴史、科学への関心を幅広い年齢層に広めることを目的としていますが、それ以外の効果も凄い!!
孫が一緒だと、おじいちゃん・おばあちゃんがお金使う!
公共交通の割引の仕方ですが、移動距離は関係なくて、「高齢の方が中心市街地までくれば定期券は100円」というものです。 ※途中で降りちゃうと適用されない。孫を連れて市街地に遊びに来たとすると、お店にお金を落としていくんですって。
この効果で、富山市の空き店舗数が微減したそうです。地方都市の人口減の中、少しでも空き店舗を減らしたという事実。
歩く距離が増えた事で健康寿命がのびて、医療費削減!!
お年寄りが孫を連れて街に出歩く事で、両親も働きやすくなり(または休養が取れる)、活気が戻り町が賑やかになりお店も潤い、家族としての絆も深めることができ、高齢者の歩く距離が増える事で健康寿命が延び、それが医療費削減に繋がる。一石二鳥どころではない!!!
ポジティブな面のみをほじくりだしており、もちろんデメリットもあるのでしょうが、トータルでみればメリットの方が大きいのではないでしょうか。
規模や時代の流れに応じた施作をしないままでは、存続できません。 強者生存でなくて、適者生存。
北陸3県(特に福井)の全国ランキングからみた実力
以下、北陸3県がランキング上位で印象的な項目をピックアップしました。
・県民幸福度(北陸3県が上位5に全てランクイン 2016年度東洋経済オンライン監修)
・失業率の低さ
・生活保護受給率の低さ
・健康寿命
・人口十万人あたりの社長輩出率
・住環境の満足度(持ち家率や1人当たりの家の広さ等)
・共働き率
・勤労世帯あたりの収入(1位福井 2位東京 3位富山)
・保育園の収容率
・世代間の同居率
・ボランティア参加率(福井県1位)
・全国学力・学習状況調査(2015年度小・中学校 参照)
・全国体力調査(小5、中2の調査で、2008年~2016年ほとんど福井県1位)
※注意
このランキングというもの、対象や条件次第で順位はいくらでも変わってきます。
例えば、人口10万人あたり/性別/中小企業も含めるor 大企業限定/県・市で分けるか/等、切り口によって順位は大きく変動しますし恣意的な解釈も可能ですので、各出典に注意し、一つの例として見て下さい。
自分も学生時代の友達が富山にいて、実際肌で感じていましたが、もうとにかく家が広い!!
たまたまその家だけかと思いましたが、そうじゃない。何軒も他の家にも入りましたが、広くて何部屋もあるのが富山では普通でした。まあ、行ったら分かります。もてなしも凄くて、震えて動けないくらい寿司を食べました。
教育に力を入れ、女性が働きやすい街
北陸3県が上位を占める項目は、互いにリンクしています。3世帯同居が多く、おじいちゃんおばあちゃんが孫の面倒を見て夫婦は共働きが当たり前の風土なので、女性がドンドン社会に出て稼ぐ。企業も保育所もその受け皿を整備しており勤労世帯あたりの収入が増えた結果、福井と富山は東京と同等の額を稼ぎ出し、失業率・生活補助受給率の低さにも繋がっています。
そして、特筆すべきは北陸3県の学力の高さ。驚くことに、体力測定も福井県は1位をほぼ独占しています。
体力・学力共に高いという事は、小中学校での取り組みに原因がありそうです。
福井県、一体どんな教え方してるの??
本書中、福井県の先生へのインタビューでは「テストに対して特別な授業を実施していない」とありましたが、普段の教え方に答えが隠されていました。
福井県では、従来の”先生が一方的に教えて生徒は板書する”というスタイルではなく、自分で考えて、書いて、発表して、その後検証するそうです。
ある題に対して、生徒はそれぞれ意見を述べて、その意見に対して先生は「なぜそう思うのか?」を問いかけ、自分の考えの根拠を調べてまた発表する。といったサイクル。
勉強だけじゃないよ!!
それは体育の時間でも同じで、例えばリレーのチームを作ったとして、測ったタイムに対して次回どうしたらタイムを縮められるかをメンバー内で話し合って目標を設定。自分たちで具体的なプランを考えて実行しその結果を検証⇒ 次回どうすべきかを考える。というサイクルを繰り返す。
「大事なのは、思考の可視化」
自分で考えて試す。その結果からまた自分で判断して動く。
大事な事を、子供の時からきちんと教えられてるんですね。
ここが一番素晴らしいです。痺れます。
小さい時にこれを身に付けれるかどうかで、その後の生き方に大きく影響するのは火を見るよりも明らかですもんね。
まとめ
自分が住んでいる和歌山県は高速道路の普及が遅く、今もそこに力を入れています。
昨今の和歌山国体開催の影響で市内から岩出方面の道は綺麗に整備されましたし、高野山・橋本に抜ける京奈和道路も便利になりましたが長期的な視野で考えると、利用者が減っていく中で道路を拡張していくという事は、将来保全・改修費用が掛かってくるという事。インバウンドを呼び込み、地域住民の幹線として機能していれば良いが、そうでなければ「将来の負債を生み出している」という考えには及んでいませんでした。
今回、福井モデルを読んだ後、「街の在り方」について他の本やネットを見ていると、“必ずしもコンパクトシティの考え方が成功しているとは限らない。”という意見も見られました。
確かに県民性や地域性も様々ですので、この考え方が全ての場所に当てはまりませんが、今までと同じやり方では街が継続できないのは事実。和歌山市にもLRT(次世代路面電車)を敷くという話があがっているのですが、この本を読むまではほぼ関心がありませんでした。本書によって北陸の取り組みを知ることができ「街づくりに対しての関心」が出来たので、わが街の施作についても興味を持って追っかけるとします!
すすまないコンパクトシティの実情【2018年4月21日 日経新聞記事より追記】
今日の日経新聞の一面に関連記事が載っていました。現時点で、自治体は郊外の開発案件の全てを事実上黙認しており、人口減時代に向けたコンパクトな街づくりは進んでいない様です。
流れとしては、国土交通省が2014年から補助金等を通じて自治体に「立地適正化計画」の策定を促進していました。
具体的には「居住誘導区域」と「都市機能誘導区域」を設定し、その区域外の開発には届出を義務付け、無秩序な開発を抑制する効果を期待するものでした。
※届出に対して行う事の出来る事業者への“勧告”自体は強制力はもちません。
しかし、届出に対して何も手を打たなかった自治体が過半数。調整をしたとしても建設計画を見直した事例は0。それだけ効果がなかった原因は、詰まるところ、現計画は指定区域外(開発を抑制しようとする地域)の住人に対しての配慮がなされていない。という点に尽きる様です。
米国では、中心部に移る人には補償金を出す制度や、空き家を自治体が保有し希望者に渡す仕組みがあるそうですが、日本ではそうした具体的な取り組みはこれからなのでしょうか。。。