マッケンジー法
症例8 長引く左肩と両手首の痛み①|30代美容師
今回は30台前半の男性美容師さん。約3か月、全5回の通院でほぼ完治された例です。
一回で書いてしまうと長文になるため、分けて報告します。
主訴は、左肩と両手首の痛み
何もしなければ痛くは有りませんが、左手首を橈屈(親指側に曲げる)と8/10の痛み。利き手の右手首は4。左肩は90度から上に挙げようとすると、3~4。 ※肩の痛みは周期的で痛まない時もある。手首の痛みは徐々に悪化しています。
【経緯】
19歳から美容師を始め、21歳位から左肩が挙げにくくなったそうです。
その後もずっと治らなかったため26歳頃に整形外科を受診。MRIやレントゲンの検査の結果「腱板炎」の診断を受け、痛みどめの注射である程度良くなってからは病院に行っていません。
痛みを再現できる動作は、左ひじを上方に突き出すような仕草(髪を切る時の体勢)。
肩だけでなく約1年半前から右手首が痛みだし、おって半年前から左手首も痛くなりだしました。
共に、腕立て伏せの様な手首を背屈させて身体を支える動作で痛みが生じ、ジムでウエイトトレーニングをする時も困っています。親指側に手首を曲げる動作で顕著に痛みが生じます。
動かさなければ痛くはないが、起床時は動かしにくいとの事(睡眠中の姿勢の影響?)
首の可動域検査
左回旋に、軽~中度制限があり、左首が重怠くなります。
この点は気にしつつ、まずは矢状面から確認していきます。
マッケンジー法では、痛む場所が肩や手頸であったとしても、まず脊柱由来の可能性を考えます。勿論、痛むその場所自体が原因のこともありますが上肢の神経は全て頸椎に繋がっており、その大元からチェックしていきます。
最初に、顎を水平に引く動作(リトラクション)を行います。
顎を前に突き出した姿勢に慣れてしまっていると、この動作は少し難しいかもしれません。
一緒にこの動作を何セットか繰り返し、動かし方のコツを掴んでもらいます。

数回やってもらうと、上手に動かせています。 顎を引く動作は問題なさそうです。

ゆっくりと2セットほどして貰った後、次は自分で顎をひき、出来るだけその状態のまま頭を後ろに反らせていきます。
※いつもの1分あまりの説明動画です。

普段しない動作なので、何度かゆっくりと練習をします。
完全に顎を引いた状態で反らすのは難しいので、「出来る範囲」から始めます。
顎の位置を水平に引くお手伝いをしながら、5回を1セットとして2セット程実施しました。

何か変化はありましたか?

RET+EXT over pressure 右手首痛 B VAS4→0
左手首 痛みの種類が変化?
首の可動域をチェックしてみると、左回旋の可動域がさっきよりも狭くなっています。
一見、良い反応と悪い反応の両方が出ている様ですが、変化が出ているので、続けるとどうなっていくのか。
更にしっかりエンドレンジ(最終可動域)までを意識して、運動を続けて貰います。

頸椎伸展動作を終えて手首の動きを確認していると、拇指の曲げ伸ばしに引っかかる様な感触が生じています。
結果、利き手の右手首の痛みはほぼなくなりましたが、左手首の痛みの強さはほぼ同じくらいで、新たに左親指ばね指の様な症状が発現しました。
・Re Ret + Ext ER セルフ OverPressure P 左手拇指 ばね指? NW
ジムにほぼ毎日通われているだけあって一つの動作をきっちりしようという意思が感じられ、身体の変化にかなり敏感な方です。 より土台である胸椎の動きをつけて首を反らしやすくするのと、少しクールダウンの意味も含めて、座った姿勢のままで椅子の背もたれを利用して、力を抜いた状態で頭を後ろに反らしてもらいます。


自宅で行うホームワークは、椅子に座った状態で力を抜いて、背もたれを利用して首を反らせる動作を 5回×4セット (一度に一気に行うのではなく、3~4時間おきを目安として)としました。
どういう経過を辿ったのか、2回目以降の内容は別途投稿します!!
前回の症例 ⇒症例7 右手中指の痛みと痺れ|70代女性
次回の症例 ⇒症例8 長引く左肩と両手首の痛み②|30代美容師