マッケンジー法
症例8 長引く左肩と両手首の痛み②|30代美容師
引き続き30台前半の男性美容師さんで、約3か月、全6回の通院でほぼ完治された例の後半です。少し長くなりますが、初診以降の計5回の経過です!!
【おさらい】
主訴は、左肩と両手首の痛みでした。
現状、左手首の痛みが一番強く、親指側に曲げると8(10が最大)の痛み。利き手の右手首は4。左肩は90度から上に挙げようとすると、3~4。
※肩の痛みは周期的で痛まない時もあるが、手首の痛みは徐々に悪化している。
痛みを再現できる動作は、左ひじを上方に突き出すような仕草(髪を切る時の体勢)。
初日、頸椎伸展動作を終えた結果、利き手の右手首の痛みはほぼなくなりましたが、左手首の痛みの強さはほぼ同じくらいで、新たに左親指にばね指の様な症状が発現しました。
さて、これは良いのか悪いのか??
首の伸展動作で反応が出ましたが、後半に首にだるさが出て力が入ってしまう状態になっていたので、「力を抜く」事が出来て、より自宅で継続しやすそうなエクササイズに変更しました。
→ 椅子に座った状態で力を抜いて、背もたれを利用して首を後ろに反らせる動作を 5回×4セット (一度に一気に行うのではなく、3~4時間おきを目安として)。
まずは、土台である胸椎の上部から。この動作を家で継続してもらいます。
2回目(初回から一週間後)
ホームエクササイズは5回×2セット/日 出来ていたそうです。
現時点での痛み →橈屈時の痛み 右手首 VAS1 左手首 VAS6 (※初回時は右4 左8)
肩の痛み0 (初回3~4)
全体的に少し良くなっている事が実感できているそうですが、起床時の手首の痛みに変化は有りません。
ある程度の改善はみられるのですが、まだ少し伸展動作がやりにくそう。
前回、首の左向きの制限が強く、左首が重怠くなる点が気になっていました。
左の回旋動作をしてもらいます。
椅子に座って首を左回旋5回 ROM ↑ (左向きの可動域増)
続けて左回旋 5回×3セット 続けて貰うと、手首の痛みが減るようです。
座っての運動は少し力が入っている様なので、仰向けになって左回旋してもらいます。
左肩~左手首にジワーンとした、なんだか良い感覚を感じるそう。
左を向きっぱなしでいて貰うパターンも試しましたが、反復運動の方が良い結果でした。
家で実施してもらうHWは、「仰向けで首を左に回旋させる反復動作」としました。伸展方向でもう少し反応を見ても良いのですが、力が入ってしまう様で、より継続しやすく、本人が効果を感じる動きを選択してもらいました。
(注意点)
・回旋する前に、顎をしっかりと引いて、最後までしっかりとまわし切る事。
・気持ち悪くなったり、やり終わってから暫くしても痛みや痺れが引かない場合は、一旦中止して連絡してもらう事
3回目(2回目から一週間後)
2回目の来院から5日ほど経った日に、左手首に今まで無いくらいの痛みがあったそう。原因は不明。
ホームエクササイズは3~5回を一日1セットだけ実施。
激しく痛かった日だけ、5回×3セットしたそうです。
現状は、左手首橈屈でVAS2–3 右手首ほぼ0 肩の痛みはありません。
痛くなった原因ははっきりとは分かりませんが、普段から起床時から症状を強く感じる事が多い。という点で、睡眠時の姿勢が考えられます。
前回、右回旋で悪化したことも確認できたのと、どちらかを向いたままで長時間いる事は症状を悪化させる可能性が強いため、うつ伏せで寝る事はやめて貰うようにしました。
あと、会話の中でスマホを一日4時間ほど左手のみで扱っている事も分かりました。
極力スマホを見る時間を減らすと共に、影響していると思われる下を向いた姿勢について注意してもらいます。
4回目(3回目から一週間後)
仕事の合間に、ちょくちょくエクササイズを実施できているそうです。
右・左手首共に、2/10 くらいの痛み。 肩は痛み無し。
本人の興味もあり、確認の意味で逆方向の右向きを数セットしてもらいます。
今度は仰向けの状態で、顎を引いて左を向く動作をしっかりと3回を2セット実施
本人の実感を得れたので、自信を持ってエクササイズを継続してもらいます!!
5回目(4回目から3週間後)
かなり症状が安定してきていたので、今回までに少し間が空きました。
人間、ある程度良くなってくると気が緩みます。 自分がそうなので。。
そんな心配は杞憂で、しっかり毎日3回×5セット実施できていました。
右手首0.5 左手首1.5 位で、90度以上挙げても肩はずっと痛まない状態。
首の可動域も全方向で制限なく動けています。
日常生活・仕事では問題ないレベルまで改善されており、ジムでのウエイトトレーニングは過剰な負荷を掛けずに自重ですませているとの事。
マッケンジー法では、横方向や捩じる負荷を必要とすることもありますが、それらの問題が解決された上で、最終的に矢状面での評価に戻ります。
忘れかけている初回の内容はこちら→ 症例8 長引く左肩と両手首の痛み①|30代美容師
初回の時は、非常にやりにくそうでしたが、今はスムーズに行えるようになりました。頸椎の本来の可動域が確保され、必要な伸展負荷をしっかり掛けれています。
ホームエクササイズは、RET+EXT(顎を引いて、頸椎の伸展) 3回×5セット/日 としました。
卒業は間近です!!
6回目(5回目から約2か月後)
きちんとルーティーンとして身についている様です。仕事では支障なく、橈屈動作(親指側に手首を曲げる)や腕立て伏せで手首の痛み診感じなくなりました。
スマホをする時の姿勢についても気を付けている様です。
・・・充分多いけど、良しとします。
運動の必要性を理解し、自己マネージメント出来ているので、治療は今回で卒業です!!
この美容師さんはジムで鍛えており、身体の状態に敏感でストイックな方でした。
生じた反応についての細かなニュアンスを伝えて貰え、エクササイズもしっかりと出来ていたので、マッケンジー法との相性が凄く良かったと言えます。
前回の症例 ⇒症例8 長引く左肩と両手首の痛み①|30代美容師