今回は、力を入れている「マッケンジー法」についてお話していきます。
目次
マッケンジー法って、何ですか?
約60年前に生まれた理学療法の一つです。
考え出したのはロビン・マッケンジーさんといってニュージーランドの方で、残念ながら2013年に亡くなっています。
ROBIN McKENZIE
1931年、ニュージーランド・オークランド生まれ。1953年にウェリントンで脊椎を専門にした理学療法クリニックを開業し、1960年代に独自の診療方法であるマッケンジー法を開発。これまでに世界各地で講演と教育を行い、その功績が認められ1990年エリザベス2世ご生誕記念の叙勲で大英帝国勲章を受章、2000年新年の叙勲ではエリザベス2世よりニュージーランド功労賞を受賞。
マッケンジー法はアメリカ、オセアニア、ヨーロッパでは結構知られています。
デンマークやニュージーランドの腰痛診療ガイドラインで利用を推奨されており、その他多くの国でも効果が実証され取り入れられていますが、日本では一部の整形外科医・理学療法士の方がご存知か、「聞いたことあるかな」くらいの認知度です。
腰痛に効くとされている「〇×体操」や、「○△メソッド」といったものも、マッケンジー法がベースとなっているものが多いのですが、あまり知られていません。
流れとしては、まず詳しく問診と検査を行い、重篤な疾患が隠れていないか、マッケンジー法が適用できそうかどうかを判断します。
その後、様々な反復動作や一定の姿勢を保持してもらう事で引き起こされる反応を基に分類を行い、そのタイプに応じて段階的な負荷を加え、個人に適した手技・ホームエクササイズを提供していく手法です。
マッケンジー法の考え方
術者に頼らず「自分で治す」をいう意識をどれだけ強く持ってもらうかが鍵となるので、患者教育に力をいれています。
家庭で実施してもらう動作は、筋肉を鍛えるための運動ではなく、様々な動きの中で起こる反応を確認した上で、その人に適した動作の反復や姿勢の保持を行って頂きます。必要に応じて手技を用いながら、患者の回復の段階に応じて負荷の種類や掛け方を調整し、患者自らが行える動きで健康を維持し続ける様にしていきます。
「ルールに沿って自分で治していく」
“釣った魚を渡すのではなく、魚の釣り方を覚えて貰う”
マッケンジー法も、自分で動かせて改善させていくもの。
痛みをゼロにするのがゴールでなく、痛み・可動不全・痺れ等を情報として使いこなし、自分を律する方法を身につける事を目指しています。
海外への支援も同じで、現地にお金や食べ物を配布する事は即自的な効果はありますが、その場限りのもので持続性はありません。また、それを繰り返すことで受け身が習慣化して自立心を奪ってしまう。
“自分を養っていくための技術を身につける事で、自らの力で持続的に発展・改善できる”
術者が治すのでなく、患者が主体となって治すための共同作業を行います。
不調の原因は、分からない事が多い
たとえば、腰痛の85%は非特異性といって原因が特定できないものです。
レントゲンやMRIを撮って解剖生理学の観点からみても、理由は説明するのは難しい。なので大体の場合は、消炎鎮痛剤(湿布)と痛みどめの飲み薬を渡されて「これで暫く様子をみてみてください」となります。
画像診断と、痛みや症状は必ずしも結びつかない。これは厳然たる事実です。
腰痛のない人でのMRI画像でも、椎間板ヘルニアは見つかります。高齢の方だと殆どの人に何らかの変性があります。逆に、レントゲンやMRIの画像では全く問題なくても腰痛の人も沢山います。
そうなると説明がつかなくなってしまうが、100%関係ないとも言い切れないので、とりあえず分かり易いカタチの異常を取り上げざるを得ない。
従来の様に画像診断や解剖学的に理由を求めるのでなく、そこから一度離れて、動きの中で起こる変化を捉えて改善させていくのがマッケンジー法です。
痛いところが原因じゃない事も多い
悪くなった原因が思いつかない事って、たまにありませんか?
例えば、しょっちゅう肩が凝る人は、無意識に歯を食いしばる癖があって、それが顎から首にかけての筋肉を緊張させて、結果肩こりとなっている場合があります。
そういう人は肩を揉んだらその時はマシになりますが、大元の「歯を食いしばる」事を続ける限り、この先ずっと肩こりも続きます。
その目に見えない原因は、肩こりだけでなくて、頭痛やめまい、顎関節症などとも関連してくるかもしれません。
このように(この場合は、肩が原因ではなく「噛み締める癖」)何か全く関係なさそうな遠いところにアプローチすることで、症状が解消されることがあります。
マッケンジー法も一見、関係がなさそうなところからアプローチを進める事があります。最初から完全に信じられなくてもいいから、まず一定期間、試してみて頂けたらと思います。
マッサージの功罪
マッケンジー法での評価の最中はマッサージや押圧はしないようにしています。
※ご要望の際はマッケンジー法での評価が終わった後、もしくはそれだけの施術となります。
揉んでもらったり、ツボのあたりを押してもらうと気持ちいいです。リラックスできますし、局部の血流量が増えて、痛みを抑制する神経伝達物質も分泌されるので、一時的に症状が軽減する事も多いです。
「ああ~~ 気持ちええわ~、 だいぶマシになったわ~~」
と、そのまま治れば一番良いのですが、実際はそうでない事が多い。その時は良くなったように感じますが、根本的な原因を解決したわけでないので繰り返し再発する事もあります。
解決を目指して「これをすれば悪化する」もしくは、「これをすれば改善する」という手がかりを探る中で、マッサージによる一時的な改善は、マッケンジー法を実施する際の評価を混乱させてしまいます。
こうした再発を繰り返しやすい腰痛や「コリ」に対して、施術者に依存する「対症療法」を行っていては、その場しのぎから抜け出すことは出来ないと思い、マッケンジー法での施術の時は極力しないようにしています。
ただ、「気持ちいい」は誰もが求めるものですし良い点も多くありますので、ご自身がどのようなゴールを設定されるのかを伺いながら、必要に応じて提供できればと考えています。
マッケンジー法はどこで受けられるのか
現在世界31ヶ国に支部が設立。協会本部に認定された日本での認定資格者は約220名(2016年2月時点)となっています。
以下のリンクをご参照ください。
最新のマッケンジー法認定資格者一覧(都道府県別で記載)
マッケンジー法は腰を反らせる体操のイメージが強いと思いますが、腰だけではありませんので、その辺の内容についても投稿していきたいと思います!!
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に続きます。